未経験の業界に転職を考えている方で、会社の方や友人に、「施工管理はやめとけ」と言われたことはありませんか。ネットでは、「未経験 施工管理」と調べると「やめとけ」というワードがサジェスト欄に出てきます。
ですが、私の同僚は、「未経験で他の業界から転職されてきた人」でも、バリバリ働かれています。
結論、向き不向きがあるので、やめたほうがいいかは、その人の性格と年齢によります。
漠然と「きつそう」や「大変」などの認識を持たれている方も多くいらっしゃると思いますので、本記事では、未経験で施工管理はやめたほうがいいと言われている理由と、実際の現場はどうなか、どういった人が施工管理への転職におすすめか、について詳しく解説していきます。
【結論】人に指示を出した経験があり、外交的で、体力ある人はいける
こういった意見が間違っているとは言いませんが、「やめておいたほうがいい人もいる」というのが、正しい表現だと思います。その人の性格や年齢によっては、むしろ施工管理が向いているかもしれません。
なぜなら、ビルや工場、住宅を建てるのは学歴のある「専門家」がやっているというのが、世間一般のイメージかもしれませんが、意外にそうでもないからです。
実際に私の周りでは、「営業職から転職されてきた人」や「工場でお弁当を作っていた人」が同僚にいました。
未経験がまったくやめたほうがいいというのは少し偏った意見だと思います。
施工管理がやめとけと言われる7つの理由
- 長時間労働・残業が多い
- 休日出勤が多い
- 業務範囲が広く、マルチタスクが要求される
- 給与と業務内容が見合わないケースがある
- 肉体労働が多く、体力が必要
- 危険と隣り合わせの現場作業
- 幅広い年齢層とのコミュニケーションが必須
1. 長時間労働・残業が多い
施工管理の職場では、長時間労働や残業が常態化していることが多かったです。
工事現場では、スケジュールが厳しく、工期に遅れが生じないように進めなければならないため、遅くまで現場に残ることが頻繁にあります。さらに、緊急対応や予期しない問題が発生すると、その対応に追われてしまい、予定以上の時間を費やすこともしばしばです。
ただし、働き方改革の一環として、「時間外労働の上限規制」が、建設業界にも2024年から適応されました。
参考 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 |厚生労働省
これによって、労働時間が原則として月45時間、年360時間(限度時間)以内(例外あり)となりました。
建設業の各会社はこの労働基準法の改正に合わせて、各々が働き方改革を進めているので、ここ2,3年、長時間労働が当たり前の業界から少しづつ変化しています。
2. 休日出勤が多い
施工管理の現場では、土日祝日も含めて稼働することが多く、休日出勤が避けられないケースがあります。
さらに不測の緊急対応が必要となり、休日だったはずが連絡があり出勤することも珍しくないです。
大きな現場(請負金100億円以上)は施工管理者が多くいるため、土日祝の出勤が必要になっても、他の人で回すことができ、自分が出社しなくても済む場合もあります。施工管理者が数人だけの小さな現場ではそのようなことはまずないので、ケースバイケースです。
3. 業務範囲が広く、マルチタスクが要求される
施工管理者の業務は多岐にわたり、現場の進行管理だけでなく、図面確認、資材の発注、職人との調整、安全確認、工程管理、顧客対応など、複数のタスクを同時に進める必要があります。
関わる人も多いので、急に声をかけられたり、電話が鳴ったり、朝昼夕の打ち合わせが設定されている場合が多いです。
そのため、一つの業務に集中することが難しく、効率よく仕事を進めるためのスキルや経験が必要とされます。
未経験者や業界に入ったばかりの人にとっては、このマルチタスクが大きな負担となることが多く、ストレスの原因となることがあります。
4. 給与と業務内容が見合わないケースがある
施工管理の仕事は責任が大きく、幅広い業務をこなさなければならないにもかかわらず、給与がその負担に見合っていないケースもあります。
中小規模のゼネコンでは、給与水準が低く抑えられていることが多く、残業や休日出勤を含めた実働時間に対して適切な報酬が支払われていないと感じることがあるようです。スーパーゼネコンは、さらに実務内容も責任も大きくなりますが、その分給料水準は高いので業務内容との乖離は少ないと思います。
5. 肉体労働が多く、体力が必要
施工管理の仕事はデスクワークだけでなく、現場での肉体労働も必要です。
工事現場を巡回し、作業が順調に進んでいるかを確認するため、長時間の立ち仕事や現場内を歩き回ることが多いです。
時には重い物を持ったり、狭い場所での作業が発生することもあり、体力がないと続けることが難しい職業です。
体力に自信のない人には、厳しい仕事であると言われることがあります。
6. 危険と隣り合わせの現場作業
施工管理の現場は、危険と隣り合わせです。高所作業や大型の資材を扱う重機の周りで、現場をチェックして回るので一定のリスクがあります。
施工管理者自身が直接作業を行うわけではないにせよ、現場の安全を確保し、職人さんに危険な個所を周知徹底することが求められます。万が一事故が発生した場合、その責任を負う立場にあるため、精神的な負担も大きくなります。
7. 幅広い年齢層・国籍の方とコミュニケーションが必須
施工管理の現場では、職人や作業員との円滑なコミュニケーションが不可欠です。
現場には幅広い年齢層の人々が働いており、経験豊富な年配の職人から外国人まで、さまざまなバックグラウンドを持つ人々と連携を取る必要があります。近年は日本の労働力の低下に伴って外国の職人さんが増えており、今後も多様な人々が現場に来ることが想定されます。
施工管理の仕事はこのような多様な職人さんの作業計画から指示だし、安全確保まで行います。その際コミュニケーションをスムーズに行う能力が求められるため、外向性やマネジメントスキルが不足していると、やっていくのが難しいです。
経験者が実感している、近年の職場環境の改善現状
長時間労働が是正されつつあり、肉体労働は少ない
近年、建設の業界では労働基準法の改正を受け、長時間労働の是正に向けた取り組みが進んでいます。
スーパーゼネコンでは、各社IT技術を活用した業務効率化が進み、現場の状況をリモートで確認したり、デジタルツールで進捗管理を行うことで、長時間労働の軽減を図っています。
また、肉体労働のイメージが強いかもしれませんが、施工管理は「図面通りで建物ができているか」を確認することが仕事です。
重いものを運んだり、力のいる仕事は職人さんを呼んでやってもらえば、ほとんど自分でやる必要はありません。人によっては自分でやってしまう人もいますが、職人さんに任せたほうが安全なこともあるので、やるべき仕事だけやっていれば、肉体労働はないです。
休日出勤の有無は現場による
施工管理の仕事において、休日出勤の有無は現場やプロジェクトの進捗状況によって大きく異なります。
大規模な工事現場やタイトなスケジュールが組まれている場合には、工期に間に合わせるために休日出勤が必要となることがありますが、一方で、効率的な進捗管理や適切な人員配置が行われている現場では、きちんと週末や祝日に休暇を取れます。
企業によっては、休日出勤を強制されることなく、代休を取得する制度やシフト制を導入して、労働者がバランスの取れた働き方を維持できるようにしているところもあります。
施工管理者は危険な作業があるわけではない
施工管理者は、現場の作業を管理・監督する立場にあり、直接危険な作業に携わるわけではありません。主な役割は、現場の安全を確保し、工程の進捗をチェックすることです。現場の作業自体は、専門の職人や技術者が担当するため、施工管理者が危険を伴う作業を行うことはほとんどありません。ただし、現場内で事故やトラブルが発生しないように常に注意を払い、安全基準を遵守する必要があるため、現場のリスク管理には大きな責任が伴います。
施工管理に向いている人の特徴
- コミュニケーション能力が高く、外交的な人
- 計画や準備が好きで、人に指示が出せる人
- 資料作成、細かな数字のチェックができる人
- 現場を歩いたり、階段を上り下りするのに支障のない体力のある人
コミュニケーション能力が高く、外向的な人
施工管理は、現場の職人や技術者、クライアント、上司など、多くの人々と日常的にやり取りをする仕事です。そのため、コミュニケーション能力が高く、さまざまな立場の人々と一緒に仕事をするのが得意な人が向いています。
現場では異なる意見をまとめたり、時には調整や交渉が必要になるため、スムーズなコミュニケーションを取れる人は大きな武器になります。
現場の進捗や問題点をチーム全体に適切に共有したり、意見を述べられる「外向的な性格」も、円滑な業務遂行に欠かせません。相手の意見を尊重しながら、自分の意見も効果的に伝えられる人は、施工管理にピッタリです。
計画や準備が好きで、人に指示が出せる人
施工管理では、工事の進行をスムーズに進めるために、事前の計画や準備が非常に重要です。「段取り八分、仕事二分」という言葉がありますが、施工管理はまさにその通りです。段取りですべてが決まってしまうといっても過言ではありません。
プロジェクトの進捗をしっかり管理し、次の作業がスムーズに進行するように調整するため、計画を立てることに喜びを感じる人は、この仕事に向いています。
さらに、現場では職人や他の作業員に対して的確な指示を出すことが必要です。リーダーシップを発揮してチームをまとめる力や、細かい部分まで気を配ってマネジメントできる能力が求められます。
人に指示を出すことが苦手でない人や、物事をきちんと準備し、マネジメントできるひとは施工管理で成功しやすいです。
資料作成、細かな数字のチェックができる人
施工管理の仕事は、現場での管理業務だけではなく、資料作成や数字の管理も重要な役割の一つです。
施工が設計図通りに進んでいるかをチェックするために、設計図や施工図などの図面の品番・数値の確認が欠かせません。現場と図面に相違があるとやり直しや取り換えが必要になるので、正確なチェックが求められます。
予算の管理や工期の調整など、細かな数字の確認作業も日常的に発生するため、注意深く数字をチェックし、誤りを見逃さない能力が求められます。
さらに、監理者の「配筋検査」や「防水検査」などの立会検査用の報告資料、工事の進行状況を報告するための管理書類、安全対策に関する資料、予算や進捗の管理表など、さまざまな書類を正確に作成する必要があります。
このような業務を正確にこなすことが求められるので、数字に強く、報告書類作成をが得意な人は、施工管理の業務に向いています。
現場を歩いたり、階段を上り下りするのに支障のない体力のある人
施工管理に、肉体労働はほとんどないのですが、毎日現場を歩いたり、階段を上り下りする必要があるので一定の体力は必要です。
特別体力に自信がなくてもいいのですが、毎日外を歩くのは苦痛な人は向いていないです。年齢的には20代~40代くらいのひとが支障なくできると思います。それ以上の年齢になると、未経験から施工管理は厳しいです。
大きな現場になると、毎日歩いてばかりで足腰が鍛えられます。慣れも部分もありますので外に出るのが苦痛でない人は一度施工管理を経験してみてもいいと思います。
施工管理転職のメリット・魅力
- 未経験からでもキャリアアップできる
- 技術の進歩により、業務負担が減少している
- 転職市場での需要が高い
- 将来性があり、安定した職業
未経験からでもキャリアアップができる
施工管理は、未経験者でもキャリアアップが期待できる職業です。
多くの企業では、施工管理の基礎から学べる研修制度や現場での実践的な指導を行っており、経験がなくても採用されるケースが多くあります。研修が終わると、「建具の品番が正しいか」、「防水は仕様書通りに施工しているか」など現場のことを知るために特定の分野の検査員として配属され、写真で記録を撮ったり、書類作成の業務を行い、慣れてきたら施工管理者へ徐々にステップアップしていきます。
未経験の方は「現場検査員」→「施工管理補助」→「施工管理者」→「現場責任者」とキャリアアップの道が明確です。
建設業界は慢性的な人材不足に悩まされており、未経験者でも積極的に採用し、成長を支援する企業が増えています。施工管理技士などの資格取得を通じて、経験を積むことで、管理職やプロジェクトマネージャーへのステップアップが可能です。未経験からでも手に職をつけ、安定したキャリアを築ける点が大きな魅力です。
技術の進歩により、業務負担が減少している
近年、施工管理の分野では技術の進歩が著しく、業務負担が軽減されています。
例えば、ドローンやAIを活用した現場の監視や、クラウドを用いたデジタル施工管理システムの導入により、作業の効率化が進んでいます。現場の画像を撮るだけで、AIが管理記録を作成してくれたり、是正したほうがいい個所を指摘してくれます。
以前は手作業や現場での確認が必要だった業務が、自動化されたり、遠隔で管理できるようになりました。結果として、現場に長時間滞在する必要が減り、負担が軽減されています。
去年から「配筋検査」で画像を撮れば、図面との整合を自動で確認してくれるシステムが導入された現場もあります。これからもどんどん技術が進歩して負担が減ってくると思います。
転職市場での需要が高い
施工管理は、転職市場で非常に高い需要があります。
建設業界全体で施工管理の人材不足が続いているため、施工管理者は引く手あまたの状態です。未経験であっても、大手ゼネコンは積極的に採用しています。
実際に私の同僚にも「営業職」や「工場勤務」の方が未経験から施工管理者に転職して活躍されています。
施工管理の仕事は、働きながら、自分のスキルを高めることができるので、キャリアをさらに広げることが可能です。建設現場は全国、世界中どこでもあるで働く場所も心配する必要もありません。
将来性があり、安定した職業
施工管理は、将来性のある安定した職業です。衣食住に必要な建物は生活の基盤です。
将来的にロボットなどが出て職人さんが置き換わったとしても、それを管理・チェックするのは人間が必要なため、施工管理は今後も安定した職業として考えていいと思います。
さらに、日本国内において、インフラ整備や都市再開発、老朽化した建物の改修などの需要が今後も増え続けることが予想されており、施工管理の役割は一層重要になっていきます。
また、持続可能な開発目標(SDGs)や環境保護の観点から、省エネ建築や環境に配慮した工事が求められる場面も増えており、新しい分野での施工管理の需要も高まっています。こうした理由から、施工管理の仕事は今後も安定して需要があり、長期的なキャリアを築ける職業と言えます。
未経験者が施工管理転職で成功するためのポイント
- 自分の適性を見極め、向いているか確認
- 事前に現場の声を聞き、リアルな情報を得る
- 資格取得でキャリアアップ
自分の適性を見極め、向いているかを確認する
施工管理の仕事は、細かい作業管理や人とのコミュニケーションが必要不可欠であり、すべての人に向いているわけではありません。未経験者が施工管理で成功するためには、自分の適性を見極め、施工管理の仕事に向いているかを確認することが重要です。
計画性があり、物事をスムーズに進めることが得意な人や、複数のタスクを同時に管理できる人に向いています。また、現場で働く多くの職人や技術者とコミュニケーションを取る必要があるため、対人スキルやチームワークも必要とされます。
適性を理解することで、施工管理の業務に対して前向きに取り組むことができ、より高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
事前に現場の声を聞き、リアルな情報を得る
施工管理の現場は、実際に働くまでその厳しさや求められるスキルがわかりにくい部分があります。
未経験者が施工管理で成功するためには、事前に現場で働いている人々の声を聞き、リアルな情報を得ることが非常に重要です。
本ブログでも、私の経験をもとに「施工管理」について情報を書いていますが、一個人の経験に過ぎないので、可能であれば現場見学や職場体験を通じて具体的な業務をイメージできるまで調べることをおすすめします。
業界で働く人々の声を聞くことで、現場特有の文化や作業の進め方についても事前に知識を得ることができ、スムーズなスタートを切ることができます。
資格取得でキャリアアップ
未経験者が施工管理で成功するためには、資格取得が重要なポイントです。
「施工管理技士」の資格は業界内での信頼性を高めるだけでなく、キャリアアップにも直結します。2級施工管理技士の第一次検定は未経験でも17歳以上であれば受験できるので、転職活動を進めるうえでアピールにもなるので検討してみてください。
未経験で転職して、施工管理での実務経験をつめば、他の資格も受験でき、資格を取得することで、ポジション・収入面で大きなキャリアアップを目指せます。
未経験から始めた場合でも、まずは現場での実務経験を積み、その後に資格を取得することで、着実にキャリアを確立していくことが可能です。
「施工管理やめとけ」によくある質問
施工管理の仕事はきつい?つらいことは何?
施工管理の仕事は、体力的にも精神的にも負担が大きいと言われることが多いです。
人命にかかわる仕事なので、責任が大きく負担が少なくないことは確かです。ただし、施工管理の仕事は一人でやるものではなく、職人さんや同僚など多くの人と協力し合いながらできるので、うまくコミュニケーションをとって業務を行うことで負担を減らすことはできます。
つらいのは、現場によっては長時間労働や休日出勤が多く、仕事とプライベートのバランスを取るのが難しいことです。
だいぶ減っては来ましたが、納期が厳しい案件や施工不備などで遅延している案件などの場合は土日も稼働になります。この場合はプライベートは後回しになってしまします。
施工管理が不人気なのはなぜ?
施工管理が不人気と言われる理由は、労働環境の厳しさにあります。
前述のように、長時間労働や休日出勤が常態化している現場も多く、家族や友人との時間を持てないと感じる人が多いです。現場でのマルチタスクや職人とのコミュニケーションに苦労する人も多く、ストレスが溜まりやすい仕事とも言えます。
職人さんにもいろんな方がいます。中には頑固で自己主張の強い方もいて苦労することもあります。
さらに、給料が業務の重さや責任に見合わないと感じるケースもあり、モチベーションが低下しやすいのも一因です。これらの要因が重なり、施工管理は不人気とされることがあります。
施工管理は未経験でもできる仕事?
施工管理は未経験でも挑戦できる仕事です。
多くの企業では、未経験者向けの研修制度やサポート体制を整えており、現場で実務を学びながら成長していけます。
資格が必要な仕事ではありますが、未経験から資格を取得してキャリアを築くこともできるため、入社時に専門知識がなくても問題ありません。
実際に、未経験者が施工管理の世界に入り、キャリアを成功させている例も多く見られます。
ただし、コミュニケーション能力や計画性など、自分が施工管理に向いているかは考えたほうがいいです。向いていないと自分が苦しむことになります。まずは自分の適性があるか本記事で書いたことを参考にして考えてみてください。
まとめ
施工管理は、長時間労働やマルチタスクの負担が多いと思われがちな職業ですが、実際の現場では是正が進んでおり、未経験からでもキャリアアップが可能であり、将来的な安定性も高い職業です。
労働環境の厳しさから「やめとけ」と言われることが多い一方で、技術の進歩や労働環境の改善により、以前より働きやすい環境が整いつつあります。
未経験者が成功するためには、第一に自身の適性を見極めることが重要です。自分自身の過去の傾向や性格と照らし合わせながら、慎重に判断して転職を考えてください。