建設現場における施工管理は、プロジェクトの成功を左右する重要な役割です。幅広い業務をこなす「施工管理の仕事」が具体的にどんなものか知りたい人も多いと思います。
実は、経験者した人にしかわからない意外な業務もあります。
スーパーゼネコンで現場を経験してきた私が、具体的に詳しく「施工管理」の仕事について解説していきます。
施工管理とは
施工管理とは、建設現場における計画から完成までの一連の作業を円滑に進めるための重要な役割を担う業務です。
施工管理者は、工事が設計図通りに進行し、予定された期間内に完成するよう、工程の調整や資材の手配、労働者の管理、安全性の確保など多岐にわたる管理業務を行います。
品質の管理やコストの調整など、プロジェクト全体を統括する立場でもあり、建築物の完成度と安全性に大きく貢献できる仕事です。
仕事内容の概要
施工管理とは、建築現場において工事の進行を管理し、設計図に基づいて建物が効率的に、かつ高い品質で完成するように現場の指揮をとる仕事です。
具体的には、工事のスケジュール管理、図面の作成・確認、品質や安全性の監督、原価管理が主な業務となります。施工管理者は、作業が円滑に進むように多方面の調整を行い、プロジェクトの成功を目指します。
業務は、単に現場の監督にとどまらず、計画の立案や工事の進捗確認、トラブル対応まで多岐にわたります。
代表的な会社
施工管理を行う会社は日本全国に多く存在しますが、ゼネコン(総合建設業者)がその代表です。
ゼネコンの中でも「鹿島建設」、「大林組」などの実績がある大きな会社は、国内外の大規模プロジェクトに携わり、高度な施工技術と管理体制を持っています。
地域密着型の中小企業も多くも公共事業や民間の商業施設、住宅開発など幅広い建設分野で仕事を請け負っています。特に県や市が発注する公共事業は、地元で施工を請け負っている会社に発注する場合も多く、あまり知名度は高くない会社でで、大きな仕事を請け負っている場合があります。
ゼネコンの中でも「売上」が大きな(1兆円以上)会社は、スーパーゼネコンと呼ばれています。スーパーゼネコンは日本に5社あり、それぞれ研修体制が整っており施工管理者として成長しやすいです。
働く場所
施工管理者はスキルがあれば、全国どこでも働けます。建設現場は日本のどこでもあるので、希望の土地の建設会社に就職することで働く場所は自由に選択できます。
ただし、全国で案件を持っているスーパーゼネコンなど「大きな会社」は、建物が完成したら転勤となることもあるので注意が必要です。
家族の事情などで生活したい場所や地域がある場合は、特定のエリアに限定した職種の「エリア(地域)職」やその地域でしか仕事を請け負っていない会社に就職しましょう。
近年は、在宅ワークも少しずつは広がっており、打ち合わせや書類作成の日は家で仕事ができる会社もあるようです。しかしながら、施工管理は現場を確認するのが一番重要なので、基本的には「現場で仕事」するものだと考えておいてください。
施工管理の重要な4つ役割
- 工程管理
- 品質管理
- 安全管理
- 原価管理
施工管理には、建設プロジェクトを成功させるために重要な4つの役割があり、それぞれがプロジェクトの進行に欠かせないものです。「工程管理」「品質管理」「安全管理」「原価管理」の4つをバランス良く行いながら、工事全体を統括します。
各役割は相互に関連しており、プロジェクトが計画通りに進むだけでなく、高品質で安全かつコスト効果の高い結果を生むために重要なポイントです。
工程管理
工程管理は、建設プロジェクトが計画されたスケジュール通りに進むよう調整を行う業務です。
工期の遅延は、プロジェクト全体に多大な影響を与えるため、適切な工程管理が不可欠です。施工管理者は、設計図やクライアントの要望に基づき、日々の進捗を確認し、必要に応じてスケジュールを調整します。
例えば、天候不良や資材の遅延などが発生した場合、即座に対応策を講じ、他の作業との調整を取ることが求められます。
建設作業には順番があります。まずは骨組みを作って、屋根をかけて、壁を作って、内装をして、建具を設置します。前工程が後工程に影響するので、徹底した「工程管理」が、工事の成功を左右します。
品質管理
品質管理は、工事が設計図通りに進み、必要な品質を確保するために欠かせない役割です。
設計者や監理者、行政の検査もあるので、品質は建物にとって何よりも重要です。
施工管理者は、使用する資材の品質確認や施工方法の検査、現場の作業員への技術指導などを通じて、建築物が長期間にわたり安全かつ快適に利用できる品質を保つよう努めます。
例えば、コンクリートの強度や防水加工の仕上がりが適切でなければ、後のトラブルの原因となります。品質管理が徹底されていることで、建築物の耐久性や安全性が保証され、クライアントの信頼を得ることができます。
安全管理
安全管理は、現場で働く労働者の安全を守るための役割で、施工管理者が重視すべきポイントです。
建設現場は高所作業や重機の使用など、危険を伴う作業が多いため、事故の発生を未然に防ぐための対策が不可欠です。施工管理者は、労働者への安全教育や安全装備の確認、危険箇所の点検を行い、常に安全な作業環境を整える責任を負います。
安全管理が徹底されていないと、労災事故が発生するリスクが高まり、プロジェクト全体に悪影響を及ぼすことになります。
安全管理は、経験も重要で実際に現場を見ていないと、気づかないこともあります。
原価管理
原価管理は、プロジェクトの予算と、資材や人件費などかかったコストをチェックする役割です。
建設プロジェクトは規模が大きいため、資材費や人件費、設備費など多くのコストが発生します。施工管理者は、これらのコストを把握し、予算内での工事完了を目指します。
例えば、予算を超過しないように資材の選定や工法の工夫を行い、コスト削減も図ることが重要です。ただしで、コスト削減を優先しすぎると品質や安全性に悪影響を及ぼす可能性があるため、バランスが求められます。
建設プロジェクトは、受注する前にプロジェクトの金額が決まっています。このため予算内で建物を建てられるように日々現場で原価を管理してチェックしておく必要があります。どんぶり勘定では赤字になってしまうリスクが高まるので、必ず行います。
施工管理の仕事内容と業務の進め方
施工管理の業務は、プロジェクトの計画段階から完成に至るまで多岐にわたり、各段階での適切な判断と調整が求められます。具体的な進め方は以下の通りです。
- 現場着工前に行う、計画・発注業務
- 現場での管理業務
- 監理者・行政対応、書類作成
- アフターケア
各業務は互いに密接に関連しており、全体としてプロジェクトがスムーズに進むようにする必要があります。建物完成後は「初期不良」や「経年劣化」によってアフターケアも重要です。
会社によっては完成後も定期的な検査を実施しています。
現場着工前に行う、計画・発注業務
施工管理者の仕事は、「実は現場が始まる前」からやることがあります。
- 設計図に基づいた計画
- 工場スケジュールの作成
- 資材と人員の手配・発注
- 許可申請書類の作成
設計図に基づいた計画
施工管理者は、設計図に基づいて詳細な施工計画を立案します。
設計図は、建物の完成形を示すものであり、その通りに工事が進められなければなりません。そのため、施工管理者は、設計図の内容を正確に理解し、各工程をスムーズに進行させるための具体的な手順を組み立てます。
また、設計図に基づいた計画は、工程管理や品質管理、安全管理にも密接に関わります。現場の実情に合わせて、設計図の内容を適宜調整しながら工事を進める能力も必要です。
工事スケジュールの作成
工事スケジュールの作成は、プロジェクト全体の成功を左右する重要な作業です。
施工管理者は、プロジェクトの開始から完了までの詳細なスケジュールを立て、各工程が計画通りに進むように管理します。スケジュールを作成する際には、資材の納入時期や天候、労働者の確保状況など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。
スケジュールに遅れが生じると、工事全体が遅延し、コストが増大する可能性があるため、日々の進捗状況の確認と調整が欠かせません。
資材と人員の手配
建設現場では、必要な資材や労働者が適時に確保されることが、プロジェクトの円滑な進行に直結します。
施工管理者は、事前に必要な資材の量や種類を把握し、適切な時期に発注することで、工事の遅れを防ぎます。さらに、作業を効率よく進めるためには、適切なスキルを持つ人員の手配も重要です。
必要な人員を適切に配置し、各自の役割を明確にすることで、作業がスムーズに進みます。資材や人員が不足しないよう、常に現場の状況を把握し、柔軟に対応する力が求められます。
許可申請書類の作成
施工を開始するためには、工事の内容に応じた許可申請を行政機関に提出する必要があります。
例えば、道路を使う場合は道路占有許可申請など、各種法令に基づく許可が必要となる場合があります。これらの申請書類を正確に作成し、適切なタイミングで提出することが、工事の順調なスタートに直結します。
許可の取得が遅れると、工期が延びる可能性があるため、事前に必要な書類をリスト化し、迅速な対応が求められます。
書類の不備がないかを事前にチェックすることが、重要なポイントです。不備があると工事が始められない場合もあります。
現場での管理業務
- 施工計画の周知と調整・進捗状況の確認
- 安全点検と職人の管理
- 品質確認・検査書類作成
- トラブル対応
施工計画の周知と調整・進捗状況の確認
施工管理者の重要な役割に、計画の周知と現場での進捗状況の確認があります。
日々の作業が計画通りに進んでいるかをチェックし、遅れが生じていれば早急に対応・調整を講じます。進捗状況を確認するためには、各作業工程を細かく把握し、作業員や現場監督との密なコミュニケーションが欠かせません。
進捗確認を怠ると、工事全体に遅れが生じ、結果としてプロジェクトの完成が大幅に遅れる可能性があるため、迅速な対応が必要です。
安全点検と職人の管理
現場での安全点検と労働者の管理は、施工管理者にとって最優先事項です。
建設現場では、常に事故のリスクが存在するため、労働者の安全を確保するために定期的な点検や安全教育を実施する必要があります。特に、高所作業や重機の使用が伴う現場では、細心の注意が求められます。
施工管理者は、安全装備の確認や危険区域の立ち入り制限などを徹底し、労働者が安全に作業できる環境を維持します。
熱中症など労働者の健康管理も含めた総合的な労務管理も重要です。
品質確認・検査書類作成
施工管理において、品質確認や検査書類の作成は、工事の品質を確保し、トラブルを未然に防ぐために重要な業務です。建設プロジェクトでは、設計図通りに工事が進められ、必要な品質が確保されているかを確認するために、様々な検査が実施されます。
品質管理を徹底することで、建物の安全性や耐久性を確保し、クライアントの信頼を得ることができます。そのため、品質確認と検査の結果を正確に記録した書類を作成することが、施工管理者の重要な役割です。
トラブル対応
建設現場では、さまざまなトラブルが発生することがあり、施工管理者はその都度、迅速に対応する能力が求められます。
例えば、資材の不足や遅延、機器の故障、予期せぬ気象条件による作業の中断などが挙げられます。このようなトラブルに対しては、即座に代替策を考え、プロジェクト全体への影響を最小限に抑えることが必要です。
職人さんの間のトラブルやクライアントからの急な変更依頼にも柔軟に対応し、全体のバランスを取りながら工事を進めることが求められます。
多くの職人さんがいるので、作ったものが他の人の作業で壊れてしまったり、手戻りになった場合に、揉め事が発生しやすいです。
監理者・行政対応、書類作成
施工管理業務において、書類作成と監理者・行政対応は非常に重要な役割を果たします。建設プロジェクトは法律や行政の規制に基づいて進められるため、正確かつ適切な書類の作成や提出が必要です。
- 工事完了報告書の作成
- 立会検査の実施
- 契約書や請求書の管理
- 日報の作成
工事報告書の提出
工事が進行する中で、工事報告書の作成と提出も欠かせない業務の一つです。
工事報告書は、プロジェクトの進捗状況や工事内容を記録し、関係者や行政機関に報告するための重要な書類です。報告書には、工事の進行状況や作業内容、安全対策の実施状況などが記載されます。施工管理者は、現場での状況を正確に把握し、適切なタイミングで報告書を提出することで、プロジェクトの透明性と信頼性を確保します。
報告書は後々のトラブル対応時に施工状況の確認としても役立ちます。
立会検査の実施
立会検査は、工事の品質や安全性を確認するために、監理者や行政担当者が現場で行う検査です。
この検査は、工事の重要な節目ごとに実施され、施工が計画通り進んでいるか、設計図に沿って正確に行われているかを確認します。立会検査の結果に基づき、是正が必要な場合には改善措置が講じられ、プロジェクトの完成に向けての調整が行われます。
施工管理者は、検査日程を調整し、検査内容を把握し、必要な資料や書類を準備して検査に臨みます。検査の結果は報告書に記録され、後々の管理や保証にも影響を与えるため、非常に重要です。
契約書や請求書の管理
契約書や請求書の管理も、施工管理者の業務です。
契約書は、発注者と施工会社の間で取り交わされる重要な文書であり、工事の範囲やコスト、工期、支払い条件などが記載されています。施工管理者は、これらの契約内容に基づいて業務を遂行し、問題が発生した場合には契約書に従って適切に対応します。
工事の進捗に応じて職人さんからの請求書を整理し、管理することでコストを管理できます。お金に関わる書類の適切な管理は、プロジェクトの円滑な進行に不可欠です。
日報の作成
日報は、職人さんと施工管理者のコミュニケーションツールです。現場での作業内容や進捗状況を毎日記録した書類です。
まず、施工管理者はその日に行ってほしい作業内容を日報に記載し、職人さんに指示を出します。作業が終了するか、その日が終わると、当日の作業内容、使用した資材や機材、労働者の人数、作業の進行状況などを職人さんが詳細に書いて施工管理者に報告を行います。
日報を確認することで、工事の進捗や問題点を即座に把握でき、翌日以降の作業計画に反映させることができます。また、日報は後にトラブルが発生した際の確認資料としても役立ちます。正確な日報を作成・管理することで、現場の透明性を確保し、全体のプロジェクト管理が円滑に進行します。
アフターケア
意外と忘れられがちなのが、建物完成後のアフターケアです。施工管理者は作って終わりではありません。建物を長期的に使ってもらえるように、補修や点検も行います。
- 初期不良の補修
- 定期的な点検
- お施主さんへのヒアリング
初期不良の補修
建物の引き渡し後、予期せぬ初期不良が発生することがあります。
施工管理者は、お施主さんからの報告に迅速に対応し、不具合の原因を特定して適切な補修を行います。初期不良の早期解決は、お施主さんの満足度を高めるだけでなく、企業の信頼性を向上させる重要な要素です。また、不具合の原因を分析し、今後の施工に反映させることで、品質の向上にも寄与します。
人の手で作られたものなので、初期不良は結構多いです。不良個所の補修など、その後の対応がお施主との信頼を構築するために、とても重要です。
定期的な点検
定期的な点検は、建物の安全性と長期的な耐久性を維持するために重要です。
施工管理者は、引き渡し後の一定期間ごとに建物の状態をチェックし、劣化や損傷がないかを確認します。点検の結果に基づき、必要なメンテナンスや修繕を提案することで、お施主さんの資産価値を保護します。
定期点検を継続的に行うことで、重大なトラブルを未然に防ぎ、安心して建物を利用していただくことができます。
お施主さんへのヒアリング
お施主さんへのヒアリングは、実際の使用感や満足度、改善点などを直接お聞きする貴重な機会です。
施工管理者は、お施主さんからのフィードバックを積極的に収集し、サービスの向上や次回のプロジェクトへの参考にします。お施主さんとのコミュニケーションを密にすることで、信頼関係を強化し、リピートオーダーや新規顧客の紹介につながる可能性も高まります。
建物利用者である「お施主さんの声」を社内で共有し、全体の業務改善につなげることも重要です。
施工管理に必要なスキル
施工管理者は、建設プロジェクトを円滑に進行させるために多岐にわたるスキルを必要とします。
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
- マネジメント能力
コミュニケーション能力
施工管理者にとって、コミュニケーション能力は最も重要なスキルの一つです。
現場では、さまざまな関係者と連携しながら工事を進める必要があり、これには発注者、設計者、施工スタッフ、役所などが含まれます。各チームとの適切なコミュニケーションを通じて、計画の変更や進捗状況、問題点を的確に伝えることが求められます。
特に、現場で発生する予期せぬトラブルや工程の遅れなどを迅速に共有し、解決策を見出すためのコミュニケーションが工事のスムーズな進行に欠かせません。
問題解決能力
建設現場では、予期しない問題が頻繁に発生するため、問題解決能力が施工管理者に強く求められます。
工事の進行中に発生するトラブルや不測の事態に迅速かつ的確に対応することで、工期の遅延やコストの増大を防ぎます。例えば、天候不順や資材の遅延、設計上の問題など、さまざまな課題に対して柔軟な発想で解決策を見つけることが求められます。
問題発生時には、自分一人ではなく、現場のスタッフや関係者と協力し、最適な対応を選択し、スムーズな工事進行を目指します。
マネジメント能力
マネジメント能力も施工管理者にとって欠かせないスキルです。
施工管理者は、現場の労働者を効果的に管理し、スムーズな作業の進行を指揮します。各工程で適切な人員配置を行い、作業の進行状況を把握しながら、計画通りにプロジェクトを進めることが必要です。
特に、現場では複数の作業が同時並行で進むため、各作業が滞りなく進行するように調整する力が重要です。職人さんを適切に配置して、わかりやすく指示をだすことが施工管理者には求められます。
まとめ
施工管理は、建設プロジェクトの円滑な進行と成功に欠かせない重要な役割を担う仕事です。
その業務は、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理の4つの柱を中心に、計画の立案から現場の進行管理、トラブル対応、書類作成と行政対応に至るまで多岐にわたります。
施工管理者に求められるスキルとしては、コミュニケーション能力、問題解決能力、マネジメント能力が挙げられ、これらを適切に駆使することでプロジェクトの成功を導くことができます。
施工管理は、単に工事の進行を監督するだけでなく、様々な関係者との調整やリスク管理も必要とされる高度な職務です。この業務を成功させるためには、多様なスキルをバランスよく活用し、常に現場の状況に対応しながら、品質と安全を確保しつつ、プロジェクトを円滑に進めることが求められます。